値上げラッシュのなか、吉野家が9日から13年ぶりの値引きに踏み切ったとのことですが、牛丼店だけでなく他のお店でも続々と値下げが始まっているようです。
日本の賃金の推移と物価の推移
日本の賃金と物価の推移はどうなっているのでしょうか?
1. 賃金の推移
日本の賃金は、特に1990年代のバブル崩壊以降、長期間にわたり低成長または横ばいで推移しています。具体的には:
- 1990年代: バブル崩壊により、日本の賃金は停滞し始めました。経済全体がデフレに入り、実質賃金の上昇は抑えられました。
- 2000年代: 経済の低成長が続き、賃金も低いままでした。特に非正規労働者が増えたことで、全体的な賃金水準がさらに抑えられました。
- 2010年代後半: 安倍政権の「アベノミクス」政策により、最低賃金の引き上げが進められましたが、全体の実質賃金上昇は限定的でした。
- 2020年代(現在まで): コロナ禍の影響で経済がさらに停滞し、一時的な賃金カットや非正規労働者の割合が増加。最近では賃金がやや上昇していますが、物価上昇に追いついていないという批判があります。
2. 物価の推移
物価の動きは賃金と異なり、以下のように変化してきました:
- デフレの時代(1990年代後半~2010年代前半): 長期にわたるデフレ経済で、物価はほとんど上昇しませんでした。消費者物価指数(CPI)は横ばいか下落傾向にありました。
- アベノミクスによる緩やかなインフレ: 2010年代後半からは、政府の金融緩和政策により、物価が少しずつ上昇しました。しかし、賃金上昇が追いつかないため、実質所得はそれほど改善しませんでした。
- 最近のインフレ圧力(2020年代): 2022年以降、世界的なサプライチェーンの問題やエネルギー価格の高騰により、日本でも物価が急上昇しました。特に食品やエネルギー関連の価格が大きく上がっています。
牛丼店が値下げを始めた理由は何なのか
考えられるのは「円高傾向」により輸入商品が割安になる見込みが立ってきたからとのことです。
円相場は6月末から7月にかけて一時1ドル=160円台まで円安が進みましたが、その後は1ドル=140円台で推移し、8日時点では1ドル=147円59銭でした。
吉野家などの牛丼店が値下げに踏み切った理由には、いくつかの背景が考えられます。一般的に、こうした値下げは以下のような要因によって影響されます。
円高の影響
円高になると、海外からの輸入コストが下がります。牛丼の主な食材である牛肉やその他の輸入食材の価格が円高によって安くなると、コスト削減が可能になります。その結果、企業は値下げを行う余地が生まれることがあります。
競争環境の変化
牛丼業界は競争が非常に激しいため、値下げを通じて顧客を引き寄せる戦略が採られることがあります。他のチェーンや外食産業全体で値下げ競争が始まると、特にコストが下がっている時期に応じて価格を引き下げ、シェアを維持または拡大しようとします。
原材料費の低下
円高だけでなく、国際的な牛肉価格や他の原材料費の下落も値下げの要因となります。輸入食材の市場価格が低下した場合、店舗はそのコスト削減分を消費者に還元する形で値下げに踏み切ることがあります。
消費者動向の変化
消費者の節約志向が強まる中、安価な食事の提供が外食業界全体で重要視されています。経済状況が厳しくなると、外食の頻度が減少するため、価格を下げてより多くの顧客を呼び戻す狙いがあります。
消費税や物流コストの見直し
政府の政策や税制の変化、または燃料費などの物流コストの改善も影響することがあります。コスト削減が可能な状況では、その分を価格に反映することができます。
これらの要因が複合的に作用して、牛丼店が値下げを決断することが多いです。特に輸入コストが重要な外食産業において、為替レートの変動や国際的な市場動向は大きな影響を与える要素です。
円高で利益が出て、値下げが予想される業界は?
円高で利益が出やすい業界は、主に輸入依存度が高い産業や、外国からの資材や商品を調達する企業です。円高とは、日本円の価値が他国の通貨に対して上昇することを意味し、外国からの輸入品が相対的に安くなるため、以下の業界が恩恵を受けやすいです。
輸入業界
エネルギー関連(石油、天然ガスなど):エネルギー資源の多くを輸入に頼る日本にとって、円高は輸入コストを削減し、燃料の仕入れ価格が下がるため、利益が増えやすいです。
食品業界:海外からの食材を多く輸入する企業(コーヒー豆、小麦、ワインなど)は、円高により輸入コストが下がるため、利益が出やすくなります。
電気・電子機器業界:パソコン、スマートフォン、テレビなど、海外製部品を多く使う製品は、円高によってコストを抑えることができます。
小売・サービス業
海外旅行関連(旅行代理店、航空会社、ホテル業):円高時は、海外旅行が日本人にとって割安になるため、旅行需要が増加しやすくなります。航空会社や旅行代理店などが恩恵を受けることが多いです。
高級ブランド品:輸入高級品の価格が相対的に下がるため、国内市場での販売が促進されやすいです。特にファッションやジュエリー、時計など高級品の取り扱い企業は円高により利益を得やすいです。
運輸・物流業
輸入貨物の取り扱い:輸入品のコスト削減により、輸入量が増加する可能性が高いため、物流企業も恩恵を受けやすいです。
製造業
原材料輸入が多い製造業(自動車、化学製品など):製造業の中でも、原材料を多く輸入する企業は、円高によって仕入れコストが低下しやすいです。特に部品を海外から調達する自動車産業や、化学製品の製造業などが該当します。
ただし、輸出企業(自動車、電機、機械など)は、円高により製品の価格競争力が低下するため、逆に利益が減少することが多いです。
円高時には、こうした輸入や海外資源に依存する企業が大きなメリットを受ける一方で、輸出依存の企業は注意が必要です。